くつろぎのBar

Bar Calma『季節を謳うBar再び』

Bar Calma  入口から店内をのぞむ

 

仕事帰り、かさばる荷を手に、見慣れた柏銀座通りを歩く。
大切に抱えなおした荷は、壊れ物だ。

大したものはつくれないが……俺は、休日は自分で料理をする。
とある夕めし時、ざっくり盛られたキンピラゴボウの皿を眺めて、突然、思った。
“浮かばれねぇ…”
キンピラゴボウの隙間から、皿の底の※(1)ボタニカルアートが覗いている。
“使わずしまい込むよりマシだが、こいつの出番はキンピラゴボウじゃねぇ…”
不憫……そう思ったら善は急げだ。
散々、雑に扱ってきた皿2枚と、ついでにマグカップをくるみ、相応しい場所で使ってもらうべく、柏でお世話になることにした。
目指すはBar Calma。
ボタニカルアートは季節表現でもある。
ならば「季節を謳うBar」が一番ふさわしい。

 

☆    ☆

 

いぶりがっこの逆バージョン、燻製チーズとピクルス☆是非一緒に食べてほしい!

 

 

「燻製チーズとピクルス。※(2)いぶりがっこの逆バージョンです。」

持込み皿を使う前に、まずは、自家製のお通しから(ですよね、笑)。
勢い込んで来た俺は出鼻を挫かれたが、思いがけず、これが新たな「美味い」との出会いになった。

いぶりがっことチーズの組み合わせは、居酒屋では遭遇する。
だが目の前にあるのは、燻製されているのは野菜側ではなく、チーズの方だ。
Calmaのピクルスが美味いのは既に知っている(好評で定番になったらしい☆)。
チーズだって、燻製は、そりゃ美味かろう?

 

「一緒に食べてみてくれませんか?」
「え?あぁ、はい、一緒にね………何だこれ?!美味いなえ~と……?!」

 

“え~と”の先が出てこない。
過去に似た経験があれば、「○に似てる」とか「△みたいだ」とか、表現できるもんだが、まったく経験の無い味だったのだ。
似た味も思いつかないし、どう美味いかの形容もできない、そんなことってあるか?!

 

だが、美味い
チーズとピクルス単独よりも、一緒に食べた方が、断然、美味い!!
旨味成分やらアミノ酸やらが、どう舌に影響するなんてのは、栄養学の先生にでも聞いたらいいのかもしれんが、俺は、この、足し算で完成する旨味にぶったまげてしまった。

 

「どうです?」
「美味いよ!でも形容できない。」
「私もです☆」
「あっはっはっ!」

 

☆    ☆

 

みんな大好き♪(でしょ?)ナポリタン☆

 

 

そしてやっと、持ち込んだ深皿登場、ナポリタンがのっている。
俺は皿を活かして欲しいとお願いした。
メニューはお任せだ。
“うん、パスタは絵になる。”

 

「好きだぜ、ナポリタン。特に喫茶店のがね(笑)。」
「美味しいですよね。」

 

きっと、こんな味。
見た目がナポリタンなら、誰もが味を想像するだろう。
だが、一口二口食べて、しっかりした旨味があるのに、味が濃くないことに気付いた。
ナポリタンなんて、味付けが濃いものの代表格だろうに、これはそうじゃない。

 

「美味しい…、ケチャップに頼り切らないナポリタン。家でも作るって?羨ましいな…。」

 

そして、食べ進むと、皿の底にボタニカルアートが見えてきた。
※(3)QUEEN’Sの※(4)ニコラス・ロバート・コレクション。
春はまだ遠いが、ふんわりしたアネモネを見ると、和むんだ…。
Made in Englandだが、決して高価なんかじゃない、日常使用の皿。
美味しいものを食べ切ると、好きな植物画が見えるなんて、幸せだ


少しずつ底の絵が見えてくる…食べ後を見せて恐縮だが、この絵が好きなんだ♪

 

 

☆    ☆

 

 

さて、腹をすかしてきた俺は、パスタで落ち着いた。
次は、もしかしたら実用ではなく、装飾用かもしれない皿。
同じくMade in England、※(5)PORTMEIRIONのbotanic gardenだ。
どうする?何を出す?
俺は、ウイスキーをちびちびやってるぜ。

 

「どうぞ、サラミのカルパッチョ・自家製ビーフジャーキー・生ハムとクリームチーズ・ミモレット・鴨の燻製です。」
「わぁ~✨✨

 

見た目もそそる、5点盛り!
ウイスキーのお供にピッタリじゃないか♪
特に気に入ったのは、自家製ビーフジャーキーだ。
相変わらず語彙がおかしくて申し訳ないが、スゲー美味くなったかつお節みたいだ♪

ビーフジャーキーは、右上の茶色のやつ♪

 

 

「ビーフジャーキー、何か汁物に入れたい、いいダシが出る、きっと。」
「ポトフとか、いいかもですね。」
「それだぁ♪」

 

そして同様に、食べ進むにつれ、皿のボタニカルアートが見えてくる。
HELLEBORUS NIGER (ヘレボルス・ニゲル)と書いてある。
クリスマスローズの名で知られた真冬の花、冬のガーデンの人気者だ。
ただ綺麗な絵というだけじゃない、根や、少し傷んだ葉まで描いてあるところが好きなんだ、あぁ和むなぁ…。

ウイスキーは、BOWMOREからTALISKERへ☆ クリスマスローズ全体はこんな感じ♪

 

 

「では最後に、お預かりしたマグカップで。パンプキンスープとウイスキーのホットカクテルです。」
「これからの季節に温まるな☆これは!」

パンプキンスープとウイスキーのホットカクテル、ウイスキーはNIKKA FRONTIER

 

 

折しも、お邪魔した季節はハロウィン。
タイムリーなスープが入ったマグカップを両手で包むと、その温かさがジワッと手に伝わる。
側面に描かれたニコラス・ロバート・コレクションのラナンキュラスやオダマキが、遠い春を恋しくさせる。
そして、ウイスキーは深いコクとなって、滑らかなスープを大人の味わいにしていた。

 

 

☆    ☆

 

 

「ご馳走様でした!まるで、コース料理か懐石料理を味わったみたいな、幸せな気持ちです。ありがとう!」

 

皿とカップは置いてきた。
なぜだか、すぐに持って帰る気になれなかった。
俺は、俺の好きな食器達に、たまにはふさわしい扱いをしてやりたかったのだ、最初は。
だが今は、その食器達が“幸せスイッチ”になった。
また、あの皿で、美味いものを食べたい。
もちろん、美味い酒と一緒に☆

そうか、食器達に旅をさせよう。
俺は、新たにやりたいことができてしまったのだった。

こんなグラスも使ってみた。映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎(R15+)」公式タンブラー。主人公の1人「水木」が、映画の中でOldParr(多分)を飲むシーンがある。劇中を思い出しながら、グラスを傾けるのもいい。

 

※(1):正確に、精密に、細密に描かれた植物画。

※(2):秋田の代表的な燻製干しのたくあん漬け。

※(3)(5):イギリスの陶器メーカー 。

※(4):バロック時代の細密画家、彫刻家。

 

Bar Calma

 柏市柏3丁目4-5

 営業時間:19:00~2:30

 定休日 :日曜日

https://www.bar-calma.net/

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