摘水軒コレクション vol.9 無銘「節分豆撒きの図」
本日は、摘水軒コレクション vol.9を連続ご紹介です!!!
摘水軒コレクション vol.9は、無銘「節分豆撒きの図」です。
今日も、寺嶋哲生さんの誘う名画の世界をお楽しみください!
My collection. Vol. 9
無銘「節分豆撒きの図」
16世紀から17世紀の中頃までの約150年間を美術史上の近世初期と呼び、この期間に描かれた風俗画を総称して近世初期風俗画と呼びます。
菱川師宣によって浮世絵という新ジャンルが確立する母体となったという意味で、初期肉筆浮世絵と呼ばれることもあるようです。
浮世絵が粋に洒脱に洗練されて行く前の、素朴さゆえに穏やかさを感じる作品であります。
さて、まずは福の神が全く神々しくない件。
大きな袋を担いで縁側から上がり込む姿は面倒見の良いご隠居風?、何やら下ネタ交じりの親父ギャグを連発しそうな雰囲気です。
一方、鬼は鬼でさほど凶悪でなさそうな件。
慌てて逃げ出す姿は十手者を怖がる博徒風?、おしめを替えてもらった近所のおばさんには未だに頭が上がらなそうです。
そして、人間は全く臆面もなくあからさまな件。
「鬼は外だぞ、こらぁ!」と言わんばかりに豆を撒き、「どもども、福は内です~」てな感じで飴?を差し出す、何とも清々しいばかりの手のひら返しでございますw。
人々が、程よい距離感で不可知な者と共存している様子。
例えば地の果てや空の彼方まで行かずとも、裏山の大木や庭先の古井戸にも神々が宿り、物の怪が潜んでいた時代。
尊き者は祀り縋り、悪しき者は払い鎮める。
小泉八雲や柳田国男が愛しんだ世界であるように感じます。
私達がいつの間にか忘れてしまい、もう戻ることのできない世界でありましょう。
バベルの塔が乱立する帝都の地中深く、息を潜める大鯰様が目覚めぬ事を祈るばかりでございます。
次回は2月14日のお昼頃?、岡本秋暉の十八番をアップします。