くつろぎのBar

Bar OPA『自分を取り戻すBar』

転職してみた。
ようやく、植物と近い環境になったのだが、なかなか新しい職場に慣れず、実感がわかない日々が続いていた。
掴みどころがない業務に、ふわふわ雲の上を歩いているようだ。
いずれ解消されるのだろうが、入社して一か月半、心の余裕を欠いたままだった。

 

「なんだかなぁ……こんなはずじゃなかったなぁ……」
転職者の常套句が出てくるようじゃ、ヤバい(笑)。
おまけに、仕事環境の変化と共に、珍しく病気をし、長くBarから遠ざかっていた。
……このままじゃダメだ……

俺は※(1)ボタニカルアートの皿をくるんで立ちあがった。

 

☆     ☆

 

Bar OPAは、いつも通りだった。
ドアを開けて最初に目に入る光景、椅子の座り心地、両腕をカウンターに置いた感触、光源の優しさ……書き出したらキリが無いが、今まで馴染んできた世界だ。
ふぅ……思わず溜息が出る、安心とリラックスが、自分を満たしていくのがわかる。

「2枚の皿を使って、フードを。カクテルは、それらに合うよう、お願いします。」

 

「お待たせしました。ピクルス・干しブドウ・生ハムの盛り合わせです。カクテルのご依頼が、《女性にも喜ばれそうな》でしたので、※(2)ソルクバーノのアレンジで、※(3)グレナデンシロップを加えてみました。」

 

 

「綺麗だね!」
全体的に彩り豊かで美しい

そして、それぞれが美味しいのは、もう、知っている。
よし、口に入れる順番は、酸味と酸味が重ならないようにしよう♪
酸味はピクルスとソルクバーノだから、間に、干しブドウの自然な甘みと生ハムの塩気が入るように……。

 

「う~ん、美味しい美味しい♪合う合う!」
「良かったです!」
落ち着いて味わっている間に、いつの間にか、仕事のことは気にならなくなっていた。
忘れたのではない。
今までは、ただ振り回されて、自分を見失っていたのだと、気付いたのだ。
あ~そうだったのか~☆
俺は俺だよ(笑)

 

「ふふっ」
「?」
「本当はさ、今回は女性向けの記事を書こうと思ってたんだよ。」
「……」
「でもさ、止めた!止めた!(笑)タイトルは『自分を取り戻すBar』だ♪」
店長の谷澤氏が、微笑んだように見えたのは、気のせいだろうか。

 

☆     ☆

 

「次は、春キャベツと桜えびのペペロンチーノ、パッションフルーツの※(4)モヒートです。」
「うわぁ、美味~い☆」

キャベツの甘味と桜えびの香ばしさがたまらない!
南国味のパッションフルーツとは、いい対比だ☆

 

 

そして二皿とも、最後にお目見えするボタニカルアートに癒されるのは言うまでもない。
はぁ、蘇ったぜ☆

 

 

さて、皆さんは、よもや俺が《酒に逃げている》とは思うまい?
俺は自分を見失ってた。

多忙すぎて、何をやっているか、わからなくなってた。
だが、そうであることに気付くには、《自分を取り戻せる場所》が必要だったのだ。
それは、ただ酒が飲める場所ではない。
前述のとおり、ドアを開けて目に入る光景、椅子の座り心地、両腕をカウンターに置いた感触、光源、フードとカクテル、それらすべてを含む、自分を取り囲む環境一式だったのだ

 

それが、「Bar」。
Bar OPAだったということ。
明日からの俺は、ちょっと雰囲気が変わるだろう。
いつもの俺に戻るだけだがね(笑)。

 

※5                       ※6

バーテンダーの所作を眺めているだけで楽しい。

※5 パッションフルーツのモヒートをつくる途中。ミントの葉を潰して、香味を加える。

※6 カクテル「エスティバン」をつくる途中。メジャーカップでレモンジュースを量る。

 

谷澤氏。背筋がビシッと伸びたシェイク姿は、見ていて清々しい☆

 

次回は柏!

 

※(1):正確に、精密に、細密に描かれた植物画。

※(2):ラム・グレープフルーツジュース・トニックウォーターでつくる、ロングドリンクカクテル。

※(3):基本的には、ザクロ果汁と砂糖でつくられるシロップ。最近はザクロ果汁が使われなかったりする。

※(4):ライム・砂糖・ミント・ラム・炭酸水でつくるロングドリンクカクテル。

 

 

Bar OPA(オーパ)門前仲町店

https://bar-opa.jp/

 

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