BAR AGROS『真骨頂のBar~ブルックラディへの便り~』
BAR AGROSにてつくっていただいたTHE BOTANISTベースのジントニック。ハーバル✨
ボトルの霜を落とせば、アイラ島で採取され使用されている植物が、学名で刻まれているのが見える✨
銀座線「銀座駅」B3出口から右方向へ、足早に歩く。
平日18:30、宵の口、Barはまだ開店したばかりだ。
こんな時間にBAR AGROSに向かうには、理由があった。
皆さんには、【長年抱えたままの疑問】って、あるだろうか?
俺にはあるのだが、その解消法はルールを決めている。
“抱えたまま数年経過しても、まだ心の中に残るなら、解消を試みる”と。
で、6年以上抱えた疑問を、ようやく解消する糸口を見つけたのだ。
疑問は、ジンの製造に使われることも多い植物材料、※1オリス・ルート。
大先輩が、一番最初にフィールドで教えてくれた、大切な思い出の植物でもある。
植物分類学上は、和名「※2ニオイイリス」の根を乾燥させたものだが、流通上では、世界に3種類のオリス・ルートが存在する。
「では、ジンに使われるオリス・ルートは何だろう?」
ジンにはIris pallidaが使用されると記載された書籍はあるが、別の書籍に「2004年の年間生産高はIris germanica(モロッコ産)が多かった」という記述を見つけたり、購入したイタリア製ハンドソープが、Iris florentinaの代用に、Iris pallidaを使用していたり……、俺がオリス・ルートに関して得た情報はバラバラ、かつ、何かの裏付けを持って確信できるものはなかった。
図書館を含めた書籍・WEB・香料会社への問い合わせ……
残された方法は、もはや、直接、蒸留所への問いかけしかない。
どんな回答であっても、あるいは回答がなくても、これで終わりにすることにした。
一般人がチャレンジできる、最大値まで挑んだ結果ならば、もう、それで満足だ。
☆ ☆
質問を送る蒸留所は、すぐに決まった。
俺の大好きなジン「THE BOTANIST」を製造している、スコットランド・アイラ島のブルックラディ蒸留所✨
ボトルの周囲には、アイラ島で採取・使用されている植物の名が学名で刻まれ、その植物材料への深いこだわりに、植物好きは、“ジャケ買い”の衝動が止められない。
そして、質問はテキストだけではなく、是非、カクテルにした画像も送りたい。
そう思った時に、思い浮かんだのがBAR AGROSであり、オーナーバーテンダーの田畑氏は、協力を快諾してくれたのだ✨
迷惑にならない時間帯に間に合い、銀座7丁目のビル5階のドアを、息を整え開ける。
「お待ちしていました。」
美術・芸術にはとんと疎いが、アール・ヌーヴォー調を思わせる店内は、とても落ち着き、これまた好きな※3ウィリアム・モリスを思い出す。
ソファー席もゆったりくつろげそうだ。深々と背中をあずけてみたい♪
「これを……!」
ブルックラディに送る、英訳前の文章を事前にお預けした。
「せっかく、田畑さんが“聞いてみます”とおっしゃってくださったのに、すみません。私自身で直接、蒸留所に“熱”を届けたくて。“THE BOTANIST”への敬意と、同じように植物を尊ぶ日本人が、こんなことを気にしているよ、と。」
「ええ、まだ聞いていませんよ(笑)。文章も、これでいいと思います。さぁ、最初はジントニックですね。」
……あ~爽やかで、優しくハーバル✨
何か1つが抜きん出てインパクトがあるんじゃなく、感じるのは植物の優しさと奥行。
単品で口に含むと、ほんのり甘ささえ感じるこのジンは、あぁ、チーズと合うなぁ♪
「次は、ゴールデンキウイのマティーニです。」
キウイ丸ごと1個なので、キウイ感満載なのは当然だが、それでも、ジンのハーバルさが消えることはない♪
それで、このジンが優柔不断でないことがわかる。
クラフトジンの種類によっては、カクテルにした際、混ぜたものに打ち負けてると感じるものもあるからだ✨
ゴールデンキウイのマティーニ。ビタミンCたっぷりだから、女性にもオススメ♪
だが、度数が高いことをお忘れなく!
「最後は、オールドタイプのソルティドッグです。」
オールドタイプは、ベースはウォッカではなくジン。
塩はグラスの縁ではなく、液体に混ざっている。
だから、口に含むときの塩味のバランスが、常に変わらないのがいい✨
縁だと、塩味を強く感じた一瞬は、舌が塩に負けてしまうからね。
うん、柔らかな塩味にも、ミルキーなチーズは合うだろうな…。
食べきらずに、残しておけばよかった…(笑)
オールドタイプのソルティドッグ。同じような写真続きだが、ご容赦を(笑)
今回は BOTANIST DAYなのだ♪
☆ ☆
田畑氏のさりげないカクテルの選択は、「THE BOTANIST」の魅力を改めて感じさせてくれた✨
そして3杯の間、楽しい話題と会話に、俺は終始笑顔で寛ぐことができた。
これぞBarの真骨頂、心からの感謝を。
さて、この原稿の執筆後に、ブルックラディにメールをするだろう。
回答は来ても来なくても、公表はしない、だって俺個人の探求だから。
頭の中は、知りたいことで、いっぱいだ。
その1つが、今、解消されようとしているが、残りは、あと何年かかるだろう(笑)
どうか……またBAR AGROSにお助けいただけることを祈ろう……。
そして、「くつろぎのBar」はとうとう海を越えてしまう(笑)。
ってゆーか、そもそも壁なんかない。
せっかくだから、「くつろぎのBar」のURLも送ってみよう。
バーチャル、メタバース、AI……世界の価値観は怒涛の如く変化していく。
海や大陸という距離は、とっくに距離じゃなくなってる。
距離は、心が創り出すもの。
手を繋ぎたいと思いさえすれば、すぐ隣に、差し出された手があることに気づくんだ。
記事の最後に、ブルックラディ蒸留所への質問の英訳をお願いした、マルテ・デットジェンス氏に、心からの感謝を。
次回は柏!!どこへ行こうか?!
飲みかけの写真で恐縮だが、最後はシャインマスカットのモクテルでスッキリ♪
お酒が弱い方は、機会があれば、Barでモクテル(ノンアルコール)を頼んでみて欲しい。
カフェでは飲めないドリンクだ✨さぁ、帰って原稿書くぞ!
※1 香料となる植物材料の1つ。乾燥させた、アヤメ科アヤメ属の、特定の植物の根。
※2 学名は、Iris germanica var. florentina (日本花名鑑1巻・2巻:㈱アボック社)や、Iris florentina(調香師が語る香料植物の図鑑:㈱原書房)の記載がある。「var.」は変種のこと。分類学上では「florentina」を含む表記を「ニオイイリス」と呼んでいる。植物において、分類学上と流通上の名称が異なるケースは、日本では日常茶飯事。だから面倒くさい、マジで(笑)
※3 William Morris 19世紀イギリスの芸術家、デザイナー、詩人、作家、翻訳家、建築保護運動家、社会主義活動家。日本人にも馴染のあるデザイン多数。皆さんも、きっとどこかで見ている。
BAR AGROS
東京都中央区銀座7-6-7 銀座近江屋ビル 5F
営業時間:月~金 18時~深夜2時、土・祝 17時~深夜0時
定休日 :日曜