Bar Alpin(アルパン)『辿り着くBar』
お久し振り、俺です。
Barの記事としては、随分イレギュラーなことを書いたと思う。
でも、長い間、ずっとずっと書きたかったんだ。
☆ ☆
“さぁ、懺悔の時間だぞ。”
2年近く、心を焼き続けた後悔に決着をつけるべく、俺は、Bar Alpinの前にいた。
一瞬、逡巡するが、決心が鈍らないうちに、店内に入る。
「あっ!お久し振りです!」
「こんにちは、約2年振りです。」
「そんなに経ちました?」
「ええ…」
どうやら、本日最初の客らしい。ラッキーだ!
「ジントニックを」
「ジンは何になさいますか?」
「“季の美”で」
「承知しました。」
高山オーナーがジントニックをつくる間に、俺はきりだした。
「2年前、かなり酔ったお客さんがいらっしゃいましたよね……高山さんが心配げに声をかけて……」
「あぁ、はい!その節はご迷惑をおかけしました。」
「いや、違うんです。迷惑なんて、ぜんぜん!」
─2年前─
その日その時間、客は、まだ来店数回目の俺だけだった。
ご機嫌で飲んでいると、一人でやって来た男性がカウンター席に座り、そのまま突っ伏してしまった!
オーナーは心配げに声をかけるが、泥酔に近い状態だ。
驚いて見つめる俺を、恐らくオーナーは、俺が不快に感じていると思っただろう。
確かに、Barに限らず、何処でも泥酔はダメだ、決まってる。
でも、誰だって酒の失敗ぐらいあるし、長い人生、泥酔する時だってあるかもしれない。
そんなことより俺は、まったく別のことを考えていた。
泥酔状態でここ(Alpin)にたどり着くってことは………
彼にとって、ここは灯台のような場所に違いない。
言わば、“よすが”のような場所なのだ。
ここには彼の居場所があり、恐らくは、来店する多くの客にとってそうであり………
“いい店だな……”
何をもって良いBarと言うのか、色々意見があるだろうが、それは俺なりの確信だった。
ぼんやり考えにふけっていると、いきなり彼が起き上がり言った。
「Alpinをよろしく!」
「はっ、はい!!」
驚いて視線をずらすと、棚のマッカランが目に入った。
「マッカランを飲むときは、必ずここに来ます!」
名も知らぬ彼に、俺は誓いを立てた。
─2年後─
「オーナー、俺は少しも迷惑なんかじゃなかった。それどころか、ここがいい店だと確信したのに、それを言わないまま帰った。それを、ずっと後悔してたんだ………」
困ったようなオーナーの笑顔が、俺を少しホッとさせる。
☆ ☆
「いらっしゃいませ!」
知らぬ間に、カウンターは客で埋まり、テーブル席でも客がくつろいでいる。
隣は、会社の仲間同士のようで、何やら楽しそうだ。
そのうち一人が席を立ち、残った一人が、俺に声をかけてきた。
「うるさくて、すみません…」
「いや、ちっとも!大丈夫ですよ!……ここはいい店ですね。」
「はい!開店した時から、来させてもらってます!」
「……そうですか」
離席していた客が戻り、俺も静かに2年振りのグラスをかたむける。
ふふふ、マッカランは苦手なはずなのに、こんなに美味かったっけ?
その日、心を焼いた後悔は消えた。
軽くステップを踏んで、俺は家路に就いたのだった。
☆ ☆
都心のBarと、その外郭エリアに位置するBarでは、同じ営業方針では通用しないのではないか。
地方で独立した有名なバーテンダーの店が、あっと言う間に閉店なんて噂も聞くからだ。
だが、Bar Alpinは、都内の一流店の技術はそのままに、地域の人々にとって大切な場所になっていた。
あぁ、素敵だな!そして、少し羨ましい(笑)!
今度は、そのカクテルを、流麗な手さばきを、書くっ!!
※何ともクリーミーな“オーガスタ・セブン”♪
Bar Alpin(バーアルパン)
柏市柏4-4-16 ロイヤルビル2F
TEL 04-7199-2286
営業時間:火曜日〜土曜日 18時〜25時、日曜・祝日 17時〜24時
定休日 :月曜日