くつろぎのBar

くつろぎのBar特別編 SOLITO MAGO COFFEE LABO「頭文字M(イニシャル エム)前編」

俺です。
その男に会うのは初めてではなかった。
だが、数回目にして彼は俺の脳裏に強烈な印象を残す。
とある集まりの場で、目に涙をにじませながら、とつとつと語られた心中。
矜持や信念と呼ばれるそれを携えた人間に会うなど、広大な砂漠で水源を掘り当てるごとく難しいと思われた。(理想や夢は、誰でも語るがね)
だからこそ、俺の分類としては*絶滅危惧種であり、尊敬の念の対象だ。
今回・次回は、そんな男、「頭文字M」へのインタビュー。

 

データ「M」
Bar Plat・Cozy bar Trias・Espresso&Bar come al SOLITO・SOLITO MAGO COFFEE LABO、4店舗のオーナー兼プレイヤーという、驚くべき能力を発揮中。自由な発想が止まらない、天性の経営感の持ち主である上に努力家。常に誰かの役に立つことを望み、実際に多くの人々に頼られる存在でもある。そこには、打算も忖度もつけ入る隙は無い。が、生来のナイーブさゆえに、傷つくこともしばしば。俺には常に困惑気味な顔を向ける(笑)。

 

10月某日 PM5:00 SOLITO MAGO COFFEE LABO

 

稼働中の焙煎機の前。重低音に重なるシャカシャカという音階は豆の転がる音だろうか?キャップに、Tシャツ・エプロン姿のM氏。焙煎に集中しながら、チラリと視線をよこし、ほんとにやるの?面倒臭いなぁ的な困惑顔。はい、やるんですよ、すみません(笑)

 

俺 :こんにちは!Mさん。焙煎所を開設されたというので、お邪魔しました。なぜ焙煎という分野で進出を考えたんですか?

 

M氏:(焙煎機から目は離さない)SOLITOの経営でコーヒーの奥深さを知り、それを、お酒を楽しむように自由に扱うには、自分で焙煎する必要があったこと。もう1つは、経営者として、自分で商品を創り出すことができる自由度です。

 

俺 :柏の葉を選んだ理由は?また、どのようなロケーションだと評価していますか?

 

M氏:3店舗が柏駅周辺なので、都内もしくは、柏駅周辺でない場所で、新興住宅の増えているところを想定していました。今回は三井不動産さんからお話しをいただき、柏の葉に進出となりました。目の前のアクアテラスが憩いの場になっていて、少し目を細めれば軽井沢に見えなくもない(笑)いい環境で焙煎ができるのではないかと。また、柏駅周辺と柏の葉はあまり行き来がありません。同じ柏ではありますが、まったく異なる人達が対象となるので、経営上もいいですね。
あっごめんなさい!ちょっと……(焙煎機に集中!)

 

俺 :こちらこそ申し訳ない!ある意味、臨場感満載ですな(笑)。さて、柏駅との接点は、SOLITOになりますか?

 

M氏:焙煎した豆で淹れたコーヒーをSOLITOでお出ししてますし、コーヒーバッグも含め、全ての商品を販売していますが、現時点で、豆の購入だけは注文制です。……ちょっと、“1(イチ)ハゼ”が来るタイミングなんで……(焙煎機に集中!)

 

俺 :(パチッ!パチッ!と、豆がハゼる音が聞こえてくる!これが“1ハゼ”か。でも、この音の重要性を、今聞いちゃいけねぇな…)店名の由来を教えてください。

 

M氏:お客様からのアドバイスで、女性が買いに来やすいよう、MAGO(マーゴ 魔法)という名称を選びました。コーヒーの香りや味を引き出すのは、魔法に例えられるよね、と。LABOというのは、柏の葉は研究所が多いからですね。

 

……暖色系の灯、香しい焙煎のアロマ、窓辺の箒、重低音とシャカシャカの二重奏を奏でる黒く大きな機械、その周りを行きつ戻りつ状態を見守る魔導士……豆に秘密の呪文が吹き込まれ、あたかも錬金術が行われようとしている……?!それは優しく秘密めいた世界観。

 

俺 :コーヒーは、酒に比べればはるかに、日常生活の一部だと思います。柏の葉の日常に溶け込み、愛される存在になるためには、何が必要と思われますか?

 

M氏:私が逆に聞きたいです。狙ってできることではないかもしれません。美味しいコーヒーを造り続けることは必須ですが……っと、“2ハゼ”です!失礼します!

 

俺 :“ハゼる”というのは何の目安ですか?(集中するM氏に酷なタイミングで質問!)

 

M氏:焙煎の指標です。手前で止めるのか、始まってからどれくらいで止めるのか?炒りの深さが違ってくるので、焙煎師によって特徴が出るところかもしれません。同じ豆でも1ハゼが始まったらすぐ止めてしまう方もいるし…豆の変化の中で、作り手がどの辺の味を好きかでも変わってきます。そこが楽しいところですね!調べれば書いてありますが、書いてある文字を読むのと、実際に作り手が話すのでは、差があると感じます。そこをどう伝えていくかというのも、お客様に近づく第一歩かもしれません。また、柏の葉は活発に催し物をやっているので、そういう場所で協力できる体制を整えたいです。お声掛けを沢山いただいているのですが、幾つか辞退してしまったイベントもあるので。

 

俺 :きっと、MAGOは柏の葉の日常風景になっていくのでしょうね。試飲ができるのも、ご当地の名が付いたコーヒーがあるのも珍しいですよね?

 

M氏:私が学んできた神戸では、それが当たり前のやり方でしたので、特別感はありませんが、この辺ではまだ珍しいかもしれません。

 

俺 :大手全国チェーンは、どこでも同じものが飲める安心感はありますが、その代わり、地域性や愛着は吹っ飛びます。その点、MAGOは強いと思いますがいかがでしょう?

 

M氏:ご当地名のコーヒーの製造は続けます。しかし、なぜ焙煎に進出したかという話に戻りますが、ここで焙煎したものは北海道にも沖縄にも売れるので、私は、北海道というコーヒーを造っても構わないと思っています。柏にだけにこだわってやろうと思っていません。

 

俺 :えっ!!!

 

M氏:発送すれば、お客様は世界中が対象のはず。それを、地域限定にしてしまっては、本来のフィールドを狭めることになってしまうので、そういうことは考えていません。お客様から、北海道ブレンドを造ってくれと言われたら、もちろん造ります!そういう商材を手に入れたというのが、私の経営者目線です。

 

俺 :もし、北海道ブレンドと言われたら、その地域に赴くのですか?

 

M氏:私自身が創作するのか?相手の思うオーダーで造るのか?で、変わると思いますが、私の創作ではなく、いただいたイメージで造ることも大切かと。MAGOという名称にしても、これまでの自分のバーテンダーとしてのキャリアの延長線上ではなく、間口を広げ、私のこれまでのカラーを着けない、そう願ったのがこの店なのです。建物にしても、三井不動産さんが99%考えた形です。私が設計したら、下がコンクリートになることはありませんし、窓の大きさも違ったと思います。でも、これをいいと言ってくださるお客様がいらっしゃるわけで、それらは私のキャリアの外側にあるものでした。だから、その分、成長できたのかな、と。自分も今までにないことを勉強できる場でした。

 

やっぱり想像の上を行く。通常の人間は、経験則でしか動けないんだよ(笑)。
そして「生き残りに必要なのは、より広域に通じる価値観」ってね。
ちょっ!ダ○ヤ○ン○経○のインタビューかっての(笑)。
だが間違いなく貴重な、新規事業に挑む者の生きた言葉だ。
こりゃあ、くつろいでる場合じゃねぇな(笑)
次回も同じノリでいっちゃいますよ!

 

*絶滅危惧種:俺の尊敬する絶滅危惧種は、もう一体、柏に生息する。俺のボランティア先の長であり、尊敬・敬愛の念を禁じ得ない。
*画像:花束を渡すようにコーヒーを?!無理矢理やらせた上に手タレだ、すまん(笑)

 

 

SOLITO MAGO COFFEE LABO

11:00~18:00 水曜定休(ご来店前に店舗にご確認ください)
070-1431-8295

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