くつろぎのBar

SOLITO&Trias「Barを愛す(その2)」

ふらふらと街に出た俺、まだ、一人になってはいけなかった。
仮住まいの部屋に戻って、たった一人になる勇気はなかった。
未だ、奥底にろくでもない感情が渦巻いていたからだ。
かといって、この街に頼れる友達はいない。
俺の足は、自然にTriasに向かった。

 

扉を開けると、カウンター両端には、既に客がいて、俺はカウンター中央に案内された。
“……今日、親父が死んだんだ”
“!……こんな処に居ていいんですか?!……”
“いいんだよ、スプモーニ”
“……承知しました”
店長は普段と変わらず、客に順番に声を掛けながら談笑している。
だが明らかに、尋常な精神状態でない客がいることに、注意をはらっていただろう。
そしてその時はやってきた。

 

俺は荒れることもなく、ぼうっと飲んでいた。
しかし、奥底のろくでもない感情はジリジリと俺を焼いて、ふとした拍子に客との会話が耳に入った俺は、その会話にスッと入り(褒められたことでない)、意地悪い質問を店長にしてしまったのだ。
“店長、俺、Barに行くようになったの最近だけど、酒について点数つけるとしたら5点満点で何点かな?”
店長は茶目っ気を目に浮かべて言った。
“………2点です”
“へ?2いぃぃ?”
“2です!”
“…………ブハッ!! 2!2点だってさ~!!”
“素晴らしい!なんて素敵な数字なんだ! 2!! ”客も囃し立てる。

 

そうだ、2という数字は、1や3とは違う、頑張り甲斐のある数字。
そう受け取ったからこそ、客も囃し立てたのだ。
無論、俺もそう受け取った。
そして、ブハッと吹き出し、どう頑張ったら3になれるんだ?と思った瞬間、平常心が甦り、ろくでもない感情がロックされたんだ。

 

俺はTriasを後にした。
未だ涙目だったが、0時近い誰もいない道路で、夜空を見上げてハハハッと笑っていた。
俺の心には2枚、絆創膏が貼られた。
1枚目は、SOLITOできちんと涙を流せたときに貼られたもの。
2枚目は、Triasで思考をポジティブに変えられたときに貼られたもの。
優しい絆創膏2枚重ねは、弱そうに見えて、そう簡単には剥がれないだろう。
押し付けでもない、恩着せでもない、店(人)にとって、それは普通の気遣いかもしれない。
だが、親父の死んだ日、それは俺がBarを愛そうと誓った日になった。

 

*ちなみに、Triasの店長は普段点数つけなどしない。彼の名誉のために言っておく。

画像は飲みかけのロブロイ。

Triasではジョニーウォーカーブラックがベースになっている。

俺は、今のところスモーキーさは一切ダメだったのだが美味しく飲めた。

少しずつ、味覚が変化(育つ?)しているようだ。

 

 

 

Cozy Bar Trias
住所;千葉県柏市旭町1-4-11-201
営業時間;19~2時
TEL;04-7141-9269

 

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