Bar sunnyspot『陽だまりの男・陽だまりの記憶』
感染拡大が続いている。
個人でできることは、新しい生活様式をコツコツと繰り返すことだけだ。
でも、外で美味い物を食べたいし、美味い酒を飲みたい。
だって、美味しい食事は、幸せな気持ちになるじゃないか。
ゆえに「くつろぎのBar」は、俺個人の一人飲みの記録なのだ。
松本人志も番組で言っていた。外食はお一人様を優遇したらどうだろうかと。
俺もそう思うよ。
☆ ☆
初めてそのBarの名を知ったのは、Instagramだった。
Bar sunnyspot……陽だまり?……Barだよ?営業時間は夜だよね?
そしてインスタは、創作カクテルの数々で彩られた、いわゆる“映え”の世界。
ほぼスタンダードカクテルしか知らない俺は、その鮮やかな世界に驚いた。
「どんな味がするのかなぁ……」
そして、俺はBar sunnyspotのカウンターにいる。
オーナーの名は、日向(ひなた)さんといった。
「日向……あぁ、そうか。オーナーは自身の名を店名にしたんですね。」
「はい。お客様には、夜なのにねって、からかわれるんですよ。」
マスクはしていても、柔らかく微笑んだのがわかる。
俺は、その時インスタのトップにあった「さつまいもの燻製カクテル」を頼んだ。
燻製って何だろう??
「さつまいもの燻製カクテル」画像では“燻製”の意味が伝えられず残念……
スッと出されたカクテルは、まったりとした液体に、黒ゴマがアクセント。
そして驚いたことに、スモークチップを燻した香りをまとっていたのだ!
カクテルを造る過程で、スモークガンという器具でチップを燻し、スモークをシェイカーに込めるのだが……
俺が今語りたいのは、すまんがそこ(造り方)ではない。
その燻された香りをいっぱいに吸い込みながら、一口飲んだ瞬間、若い頃、自然観察が大好きだったこと、野外で鳥や虫や植物を見ることが楽しくて、ひどく幸せな時間だったことが、それはもう、わぁっと、昨日のことのように、心に溢れたのだ!
あ……………
何でウルッとなってるんだ、俺は……。
さつまいもペーストとクリームの優しい口当たり、キャプテンモルガン(ラム)の風味も効いている。
だが、それだけでは多分、俺にとって「秋の収穫」を楽しむカクテルであり、感想は「美味しい」で終わっている。
「キャプテン モルガン スパイストラム」は香辛料やバニラで香り付けされた、風味豊かなフレーバー・ラム。
口・鼻・肺の中のスモークフレーバーが、アウトドア雑誌を読みふけっていた頃の、燻製作りへの興味を思い出させた。
それが更にクリーミーなさつまいもと一緒になって、「収穫」→「野外活動」と、連鎖反応的に、楽しかった自然観察の記憶を呼び覚ましたのだ。
やるな、創作カクテル!
カクテル本体だけでも、もちろんスモークだけでも、この記憶は呼び覚ませなかった。
両方があって初めて、秋の陽だまりの楽しい野外の記憶が甦ったのだ。
創作カクテルは、確かにカラフルでゴージャスな見た目が多いかもしれない。
だがその本質は、“人の五感すべてに訴えることが可能なカクテル”なんじゃないか……
素材×素材、素材×仕掛けのマリアージュは、無限大だろう。
だが、今、それはおいておく。
一人飲みの魅力その4。
それは「記憶を呼び覚ます一杯に出会う可能性」。
俺は出会った。
読者の皆さんが、創作・スタンダードを問わず、どこかのBarで幸せな記憶を辿る一杯に出会うことを、切に祈りたい。
そして、幸せな記憶を呼び覚ましてくれたBar sunnyspot、ありがとう。
あの一杯は本当に、優しい陽だまりの記憶、そのものだったんだ。
ブルーチーズとイチゴのカクテル。ブルーチーズで香り着けしたウオッカは、カクテルの温度が上がるにつれ、際立つ香りが、イチゴからブルーチーズへと変化する。